一人ひとりが病院の顔

接遇の研修会に参加したり、マニュアルを目にするとき、私たちはよくこのようにつぶやきます。  
「これはみんな知っていることだ」 
「今さら接遇なんて」 
「わたしはちゃんとやっている。これは誰か他の人の問題だ」 
しかし、知っていることがイコールできていることではないことが、しばしばなのです。
それは接遇の善し悪しは自分が決めることではなく、相手が決めることだらです。だから相手の声を聞こうとしなかったり、聞こえなければ、接遇の評価はできないことになります。また、相手の立場に立つことが難しいという事実とともに、一番見えにくいのは自分自身です。
誰しも相手が機嫌をそこねるようにしたいと思っていなくても、実際は苦情がでてきます。病院の中では、よく不可抗力的に苦情が発生します。
そんなときはこのマニュアルにちょっと目を通してほしいのです。

T.なぜ今、接遇なのか

今や、病院は患者から選ばれる時代です。患者から嫌われた病院は倒産していくと言われています。
「治療してあげる」「看護してあげる」の発想では患者は病院に近づいてきません。何らかの対策を講じなければ病院は生き残れなくなります。自治体病院といえども同じです。
今、最もサービスがよくて、業績が上がっている企業は接遇で差をつけていると聞きます。
それでは、接遇とは何なのでしょうか。辞書をひくと「官庁などで、仕事の上で一般の人と応対すること」また、応対とは「人と会って話をかわすこと」とあります。
つまり接遇とは患者あるいは関連する地域住民との人間関係づくりといえます。接遇の善し悪しは、人間関係づくりの善し悪しで決まります。どうすれば人間関係を良くすることができるのでしょうか。
それには5つの基本があります。
1.挨拶  2.表情(笑顔) 3.身だしなみ  4.態度 5.言葉遣い  
特に、直接患者と接する機会の多い看護職員は、常にこの人間関係を良くする5つの基本を念頭において、信頼と好感の持たれる応対の仕方を身につけることが重要だと思われます。  
看護職員一人ひとりの接遇マナーの善し悪しが病院全体の評価につながり、業績にも影響することをお互い認識し、責任ある姿勢で業務に励むよう努力しましよう。

U.あいさつは心の潤滑油−@

あいさつは職場を明るくする第一歩です。毎朝、詰め所や廊下で上司、先輩、同僚の方々、また患者さんと会った時には、大きな声で相手に聞こえるようにあいさつをしましょう。そうすれば一日の仕事を明るく気持ちよく果たすことができます。それがあいさつです。
もともと「挨拶」の語源は、仏教からきた言葉だそうです。「挨」は近づくこと、「拶」とは引き出すことです。できるだけ近づいて相手の中から、いのちと教えと人間性を引き出すのが「挨拶」です。つまり相手との心からのふれあいが「挨拶」なのです。
1)スムーズなおつきあいはあいさつから始まります。

@「おはようございます!」 
朝のあいさつは明るく声をかけます。よく知らない人だから、相手が見ていないからと省略せず、自分から声をかけます。
Aあいさつからなごやかなおつきあいが始まります。 
「お先に失礼します」帰りの際のあいさつも忘れないように心掛けましよう。
2)職場をオ・ア・シ・ス・でいっぱいにしましよう。 
オアシスは人の心を和やかにする言葉です。毎日のおつきあいがオアシスでいっぱいになれば、もうムッとした視線に傷つくこともなくなります。    
オ:
おねがいします。おそれいります。   
ア:
ありがとうございました。   
シ:
失礼いたします。少々お待ち下さい。   
ス:
すみませんでした。
3)返事は必ず相手の方へ向けて、明るく「はい」とするようにしましよう。
 
つい、してしまう「はい、はい」は禁物です。
4)退院にあたっての心配りをしましよう。
 
@心を込めて退院の日を迎えたいものです。退院時のあいさつは心を込めて、「おめでとうございます。お近くにいらっしゃったら、また、お顔を見せてください」などのように、あいさつをしましよう。
A見送れない同僚のために、「夜勤の高橋もよろしく申しておりました」などのように代弁することも心掛けましよう。
5)あいさつ用語 
@おはようございます。 
Aこんにちは。 
Bこんばんは、おばんでございます。 
Cありがとうございました。 
Dどうぞお大事になさってください。 
Eおまたせいたしました。 
F失礼いたします。 
Gいつもお世話になっております。お世話様です。 
Hお疲れさまでした。ご苦労さまでした。 
「ご苦労様でした」というあいさつは、厳密には目上の人が目下の人に「ごくろうであった」などという言葉からきているとされています。目上の人には「お疲れさまでした」がよいようです。
ある飲料メーカーの「五大用語」
 
毎朝、朝礼で唱和しているそうです。(病院に出入りしているある飲料メーカーのおばさんから聞きました)  
@ごめんください 
Aありがとうございました 
Bかしこまりました 
C申し訳ございません 
D失礼いたします 
ある運輸会社の「接客六大用語」 
@いらっしゃいませ 
Aはい 
Bどうぞ 
C申し訳ございません 
Dおまたせいたしました 
Eありがとうございました 
心から自然な笑顔をだせるよう、鏡の前で笑顔の練習をしてみましょう  
@身体をリラックスさせます(肩の力を抜いて) 
A静かに目をつむります 
Bしばらく呼吸を整えます 
C嬉しいこと、楽しいことを思い起こします 
Dうれしさ、楽しさを表情に出します 
E静かに目を開けてみると、鏡の中の顔が一番良い笑顔です 
Fよし、この顔で行こう!と鏡の中の笑顔に語りかけます 
要点:
  笑顔しようと思うこと  笑顔の練習をすること   笑顔を習慣づけること

●「なるべく笑顔で接するようにしているのですが、忙しくて早口になり笑顔が出なくなります。自分が外来受診したとき、笑顔でていねいに接してもらいとても嬉しかったので、心掛けたいと思います。」  「自然な笑顔がなかなか出せないので、日常生活のなかで訓練していきたいと思っています。忙しくなると笑顔は忘れてしまうのですが、忙しくても忙しいそぶりをせず、心ゆったりと仕事をしたいなあと思っています。」 (看護婦さんの声)

「目が笑ってる」とか「目が笑っていない」とかいいますが、目尻にしわを寄せるだけでなく、心からの笑顔が出せるようになりたいものです。