第二回 在宅ケアネット渋川
  今回のテーマ(口腔衛生)について質問

Q1:少ないスタッフで大勢の入所者をケアする場合に効率のよい具体的方法は。

A1:

入所者を3つのグループ(自立、一部介助、全介助)と分け、そのグループ毎に適した方法で口腔ケアを行ないますが、1日1回は確実に歯垢の除去を行い、また就寝前は義歯をはずし、口腔内に食物残渣のないことを確認してください。
@ 自分で歯磨きができる人(自立)には、口腔内の状況を把握してもらい、歯磨きの重要性を理解してもらいます。歯磨きが上手にできる所と、できない所を知ってもらい励ましや見守りをして、時にはチェックしアドバイスをしてあげます。
A 自分で磨けるが旨く磨けない人(一部介助)には、片麻痺があったりリウマチやパーキンソン等で筋力が低下したり、加齢や痴呆等によって理解力が低下している人があげられます。介助者は口腔内をよく観察し、肩、肘の動く範囲、手指の震えの程度を見て歯ブラシの柄を工夫します。コップも口まで持ってこられない場合があるので一部をカットして鼻にあたらないような工夫も必要です。
歯磨き動作は複雑なので、特に利き腕交換している場合は観察、指導が必要です。患者自身の運動機能を生かすように、また、自分自身でも行わせることは、運動機能のリハビリテーション、精神的な自信の回復にもつながるので、歯磨きに対する動機づけを行うことが必要です。
B 寝たきりの人には、介助すれば座位・半座位(ファーラー位)可能な人、意識障害のない人、ある人、経管栄養、気管切開等、状態は様々です。筋力や体力、気力が衰えている場合も多く、仰向けのままでは舌根も落ち込みやすく食物や水などを摂取したり吐き出す機能も低下します。また、寝たきりの人は特に唾液の分泌が少なくなるために口腔内の自浄作用が低下し、汚れやすくなるので口腔清掃は不可欠です。ただ、いずれの場合も本人の最近の健康状態を把握し、本人や家族の意見を大切にしながら行うことが重要です。
注水しながら吸引する電動歯ブラシも使い勝手が良いでしょう。
特に、一部介助、全介助の人には歯科医師、歯科衛生士による1週に1度のプロフェショナル・オーラル・ヘルス・ケア(POHC)を行なうのが望ましいです。
Q2:痴呆などで理解が得られず、口腔ケアのしにくい人のケアは、
   最低限何をすればよいか

A2:

歯牙に付いた歯垢(細菌の巣窟)を除去する方法は、歯ブラシ等を使用した機械的除去しかありません。水銃、ガーゼ棒、うがいでは歯垢の除去は無理です。
痴呆などで歯ブラシによる口腔ケアの介助に強い抵抗を示す場合には脱感作を行ないます。最初は口唇の周囲を触るところから慣らして徐々に口腔内へと歯ブラシを入れていき、目標である歯牙清掃へと移行していきます。つまり、できるだけ今あるリズムを崩さないようにして無理強いせずに気長に行うことが必要です。
Q1:Q2:について詳しくは要介護者や施設の状況により指導方法が異なりますので、かかりつけの歯科医師、歯科医師会にご相談ください。

Q3:緑茶など(カテキン作用)のうがいは、どうか

A3:

カテキンの薬理作用(静菌・殺菌作用)を期待した含嗽では歯垢の除去は無理です、歯ブラシ等による歯垢清掃後のうがいに使用するとさっぱりとして良いと思います。
緑茶を使用した口腔ケアの実際(経鼻経管栄養患者への口腔ケア)
http://www1.nisiq.net/~v-850/Newpage/tube.htm
http://www1.nisiq.net/%7Ev-850/Newpage/Reha.html
Q4:舌苔のケア方法について、現状は、訪問時に、ぬれガーゼで拭いている

A4:
その方法でよろしいです。さらに、歯ブラシや専用の舌ブラシを使用すればより効果的です。過度になり過ぎないように行なってください。
Q5:義歯は、毎食後はずして保管したほうがよいか。

A5:

食後は口腔内や義歯の清掃するためにはずし、清掃後はまた元どうり装着して下さい。
Q6:義歯をはずしたままにした場合、何か障害があるか。

A6:

長期間使用していなかった義歯は歯が動いていたり、歯肉の形が変化していたりして義歯が入らないことがあります、その場合は、歯科医師に相談してください。
義歯は、失われた口腔の機能を回復(リハビリテーション)してQOLの向上を目指す口腔ケアとしての大きな役割を果たしています。義歯を入れる事によって口から食べられるようになると好きなものや歯ごたえのある物を食べられます。美味しいものを味わえます。食事の喜び、楽しみを感じることができます。また、審美的にも若さを回復し、義歯に慣れてくれば言葉を明瞭に話すことができるようになり、人との会話もはずみ積極的な生活を過ごすことができるようになります。
義歯を入れて食べられるようになると、唾液の分泌が促進し消化吸収を助け、胃や腸などの消化器官の負担を軽減し多くの食品を取ることができるようになってバランスのとれた食生活を可能にします。在宅歯科診療等で義歯を入れていなかったお年寄りが義歯を入れてしっかり噛めるようになると身体的にも精神的にも元気になり、表情も明るくなってADLの改善が見られた、ということをよく経験します。
○ 義歯を入れると
(1)頭、顎の骨、歯と歯周組織の健全性の保持。
(2)噛むことによる脳への刺激
(3)唾液の分泌が促進され口腔内が清潔に保たれる。
(4)よく噛むことにより満腹感を獲得できる。
(5)咀嚼に関係する筋肉の萎縮を防止できる。
(6)下顎の位置や動きが姿勢を制御する。
(7)食べることや話すことが不自由なくできストレスを防止できる。
というような多くの効果をあげることができます。
Q7:一日の大半を寝て過ごす老人の場合、
   昼間も入れ歯をはずしていたほうがよいか。

A7:

日中は装着していて下さい。ただ食後の食物残渣等には十分に気を付けて下さい。
Q8:入れ歯をしていない人の口腔ケア

A8:
歯の残っている人には通常の口腔ケアをして下さい。清掃方法は義歯を使用していない場合と同じですが、歯がとびとびに残っていると歯の裏側や後ろ側に汚れが残りやすいので歯ブラシの毛先が届くように注意深く丁寧に磨きます。
片麻痺がある場合は麻痺側に食物残渣や汚れが溜まりやすいので注意してください。
義歯で覆われている歯肉の部分も柔らかい歯ブラシやトゥースエッテ等で清掃する必要があります。
歯肉に傷があったり、赤く炎症をおこしているような場合は触らないようにして歯科医師に相談して下さい。
歯の残っていない人にも口腔ケア、(舌苔、歯肉頬の間の食物残渣の除去)も行なって下さい。
Q9:入れ歯は、上顎、下顎どちらからはずすか順番はありますか

A9:

着脱ついては下記のことに気を付けて下さい。
義歯を入れる前に口の中をよく見て、食物残渣等が無いかを確認してください。
きれいに清掃してある義歯を水で濡らしてから口に入れます。
(1)局部義歯の場合
○入れ方
 鉤歯(クラスプ[針金]のかかる歯)を確認してからクラスプを鉤歯に合わせてはめ込みます。
クラスプの入る方向は限られているので無理に着脱しようとするとクラスプを壊したり、粘膜に傷をつけたり、鉤歯を傷めることがあるので注意が必要です。
 噛んで義歯を入れようとすると変形することがあるので必ず手で入れるようにしてください。
クラスプの数が多くて入れにくい場合は歯科医師に相談してください。
小さな義歯はしっかり持って誤飲しないように十分注意してください。
○外し方
外す時はクラスプに爪をかけて歯から外すようにしますが、鉤歯を人差し指で抑えて親指をクラスプにかけて外すようにします。
不用意にクラスプを外そうとすると、かぶせてある歯が外れたり、最悪の場合鉤歯が抜ける場合があるので注意してください。
(2)総義歯の場合
○入れ方
上唇と下唇の小帯*(すじ状に歯肉に着いている)と義歯を一致させるようにて入れます。
口腔内に入れるときには唇と頬粘膜の力を抜いてもらい横に引っ張るようにし装着します。
 装着する順序は上顎を先に入れてから下顎を入れるようにするとやりやすいです。
○外し方
上顎の総義歯で外しにくい場合は前歯を上前方にしゃくるようにして義歯の後ろに隙間をつくるようにするか、義歯と頬の間に指を入れると外しやすくなります。
上下の総義歯を外す場合は下顎の総義歯を外してから上顎の総義歯を外すようにするとやりやすいです。
※ 長期間使用していなかった義歯は歯が動いていたり、歯肉の形が変化していたりして義歯が入らないことがあるので歯科医師に相談してください。
※ 長期間取り外しをしていない義歯で外すのが難しい場合は無理に外そうとしないで歯科医師に相談してください。

Q10:イソジンでうがいをした後は、水ですすいだほうがよいですか

A10:

a)口腔内の清掃は薬物に頼らないで歯ブラシ等を使った機械的清掃に努めて下さい。
b) 通常は歯ブラシで行い、イソジンなどの薬物の使用は口腔内に急性炎症がある、気管内挿管している等の緊急時に使います。
Q11:ポリデントのようなものは、使用したほうがよいですか

A11:
義歯に付いた食物残渣や歯垢を歯ブラシ等で機械的除去後、就寝時には義歯をはずし義歯洗浄剤(ポリデント等)に保管すると良いです。
Q12:義歯をはずした場合、健康状態が悪くなり、なぜ、転倒しやすくなるのですか

A12:

高齢者の歯および義歯の状態と、全身健康状態の変化および生命予後との関連を6年間の追跡調査したところ。
1) 残存歯の少ない者、義歯必要度の高い者の身体的・精神的状態は悪化していた。
2) 無歯顎で義歯を入れていない人は20歯以上ある人より、身体的健康状態で10.3倍、精神的健康状態で3.1倍悪化していた。
3) 義歯を入れてない人は歯の喪失と共に、死亡の危険度は高くなるが、歯を喪失しても義歯を入れている人の死亡の危険度は高くならなかった。
これにより、義歯をはずしたままにしておくと、健康状態が悪化すると言える。
(九州歯科学会雑誌 第50巻1号 1996年)
:総義歯の装着が無歯顎患者の身体的平衡感覚に及ぼす影響を調べると、義歯装着
時は歩幅の拡大、歩行周期が安定し短縮し、歩行リズムが安定している。これにより義歯をはずしたままにしておくと、歩行に影響があり、ひいては転倒の可能性が大きくなります。
(口腔病学会雑誌 第66巻1号 1999年)